侵入奇胎の予兆…?
異様な不正出血
猛烈な生理痛
4月16日の検診で順調にhcgが減っていると言われた私は、自分が未だ予断を許さない状態であることなど半分忘れかけていた。
産院の次の予約すらもし忘れ、気が付いた時には1ヶ月後の日時は埋まってしまい、次の検診まで40日以上空いてしまったが、どうせ次回はカットオフ値になっているだろう、程度に考えていた。
その間のゴールデンウィークには、久しぶりに夫と北海道へ旅行に出かけた。
今年は年明け早々、卵巣嚢腫の摘出手術をし、立て続けに今回の胞状奇胎と、通院で4ヶ月が過ぎてしまったので、寄り添ってくれている夫のためにも羽伸ばしに連れて行ってあげたかった。
4月27日、会社の有給を取って早めに北海道入りし、札幌でレンタカーを借りて函館までドライブしていた。
夫は日本の免許証がないので、私が日本でのドライブ担当なのだ。
すると、札幌を発って2時間ほど経ったあたりから、じわじわと生理痛のような痛みが始まった。
これは少しヤバイやつかもしれないと直感的に感じ、ここから30分ほどの八雲で降り、遅めの昼休憩を取ることにした。
しかしその後も痛みはどんどん強くなり、しまいに体をくの字にしていなければいられないほどになった。
額に脂汗を浮かべながらも何とか八雲のドライブインに入る。
海と牧場を見渡せ、窯焼きピザが食べられる素敵なレストランだったが、私はそんなものを楽しんでいる余裕もなく、とにかく席に座ると、カバンに潜ませておいたロキソニンを飲んだ。
しばらく体を曲げて歯を食いしばっていたが、耐えきれなくなりトイレへ。
さぞかし出血しているかと思いきや、全く出血していなかった。
普段の生理の場合、トイレットペーパーに微量の血液が付くことで生理の到来に気がつくのだが、この尋常ではない痛みにも関わらず、出血する気配は無かった。
しばらくその場でへたっていたが、流石に夫を放置し過ぎていたので、一旦席に戻った。
夫は先にピザやローストチキンを美味しそうに食べていたが、私の方は全く手を付けられず。
そのまま、半ば気を失うような形でしばらく眠り込んだ。
20分ほど経つと、痛みが和らいだ感覚で目が覚める。
先程までの猛烈な生理痛が嘘だったかのようにラクになっていた。
やっとロキソニンが効いてきてくれたのだ!
少し空腹感も出てきたので、夫が残しておいてくれたプリンやピザを数ピース食べた。
また次の痛みのウェーブが来る前に函館に辿り着かなくてはと、急いで八雲を後にする。
その後は再び痛みに襲われることなく、何とかその日に泊まるホテルに辿り着いた。
4月27日、突然の大量出血
ホテルの駐車場に車を泊め、車を降りようとしたその時、下半身あたりから「プツッ」とした音が体の中で響いたような感覚がした直後、突然太ももまで生温かいものが染み渡る感覚があった。
…出血?
いや、一応ナプキンは付けて来たのだから外に漏れることはないだろうと思い、そのまま車を降りてチェックインをした。
部屋へ案内されるとすぐにトイレへ駆け込み、私の下半身で何が起こった確認しに行った。
すると…
太ももまでに渡理、ストッキングも下着も鮮血で真っ赤に染まっていた。
自分の血液だけど、まるで殺人現場に出くわしたような血の量に卒倒しそうになった。
これまで多い日だって一度にこれほど出血したことはない。
ましてや初日など、多くの場合はおりものシートにちょこっと血液が付くだけで終わることの方が多かったのだ。
この異様な光景にしばらく固まっていたが、とにかく服を着替えて洗わなければと、箱根観光に行きたくてウズウズしている夫の横で、慌てて着替えを出し、バスルームに閉じこもった。
脱いで見ればさらに惨状が明らかに。
付けていた軽い日用の小さなナプキンは、突然押し寄せた土石流のような出血に、キャパシティを遥かにオーバーし、下着と共に真っ赤に染まっていた。
よく見ると、一筋のヒモ状の物体が付着していた。
心なしか、先っちょがぷくっと水泡状になっているような…
これは、まさか子宮内に残っていた奇胎…?
本来であれば、産院へ持ち込んだ方が良い物なのだろうが、北海道からはるばる持ち帰る訳にも行かないので、捨ててしまった。
その間にもダラダラと出血が続くので、念の為に持って来ていた夜用の巨大ナプキンに代え、血だらけの衣服は全て洗って干し、その場は何とか片付いた。
その後は特に腹痛も貧血症状も無かったので、痛み止めを持って夫と函館観光に出かけた。
結局夜まで腹痛がぶり返すことなく、ジンギスカン食べ放題で栄養を補給し、平和にホテルへ戻ってきた。
4月28日、猛烈な生理痛と大量出血、再び
翌朝、ナプキンには一切血が付いていなかった。
あの一度の大量の出血で、一気に生理が終わってしまったのだろうか?
まあ変な生理だったけど、終わったならもういいや、と、朝食を食べに行く。
ホテルの絶品の朝食をペロリと平らげ、部屋に戻って支度をしていると…再び昨日と同じようにジワジワと下腹部が痛み始める。
10分と経たないうちに痛みはピークに達し、出かける準備を中断してベッドに転がり込むことに。
全身冷え込んでしまい、たまらず人間暖房機のダンナ君が入っている布団の中に潜り込む。
子宮が何かを押し出そうとする感覚に耐えられず、ベッドをすり抜けてトイレへ駆け込み、子宮を助けるようにいきんだ。
何度かいきんだその時。
プツッ
また私の体の中で何かが切れたような音がし、次の瞬間にはジャーッと大量の液体が流れ出て来る音がした。
覗き込むと、便器の中が真っ赤に染まっており、再び卒倒しそうになる。
しかし、その出血が済んでしまうと痛みはどんどん楽になり、普通に歩き回れるようになった。
その後は生理痛が来ることもなくなり、量も通常の生理の量になり、1週間ほどで完全に血が止まった。
この時は、しばらく生理が来ていなかったので、子宮さんが生理の仕方を忘れてしまったのかな?くらいに考えていた。
5月11日、再び不正出血
完全に血が止まった1週間後、朝、トイレに行くと、トイレットペーパーに鮮血が付いていた。
また不正出血のようだった。
それも、まあまあ量が多い。
生理3日目くらいの量の出血は翌日まで続いたが、その回は2日で止まった。
しかし1日置いてさらに翌日、再び出血。
これも2日ほどで止まり、以降は不正出血は無くなった。
それでもこの時は、掻爬手術後の生理周期が整っていないための不正出血だ、くらいに思っており、まさかこれが侵入奇胎の予兆だったなど、この時は想像もしていなかったのだった。